なぜ咬むのか。― 犬の攻撃性を「葛藤」という感情から読み解く。
犬が自分から近寄ってきて、なでられている最中に突然咬む。ここには2つの感情が見て取れる。触ってほしくて近寄り、仰向けになる。飼い主が手でそのおなかをなでる。これはうれしい気持ち。だが、不意に犬の中に過去の辛い記憶が蘇る。身を守るために咬む。これは怖い気持ち。
ポジティブな感情とネガティブな感情が重なる瞬間。一般的に矛盾というものは解決する方向へ進む。ネガティブな感情の行き場を、咬むという行動で解決している。本当の意味での解決はしていないのだが、ひとまず攻撃という形に変えて解消される。これまで不安や恐怖を感じた経験があったはずだ。それが人間の手にリンクしているのかもしれない。
よくよく話を聞いてみると、もともと不安気質で執着が強い。縄張りに対しても物に対しても。家族はその都度対応していたが、人間側の思いとは裏腹に、犬側で独自の論理が構築されていったように見受けられる。こうしたかけ違いが年月を経る中でほどけないくらいにまでこじれてしまって、ついには攻撃性が手に負えなくなる。突然強い攻撃性が現れたように見えても、実は少しずつ激しさを増してきた結果であることがほとんどだ。
人間のように社会にもまれてそのうちわかるようになることは、犬の場合はないので、一度形づくられた思考と行動は、そのままにしていては望ましい姿へ変わることはない。悪化する一方だ。改善のためには人間の関り方を根本から変えるしかない。
うれしい、楽しい、美味しい、気持ちいい。そう犬が感じるポジティブな方向へ誘導する。もし望ましくない行動が見られたら、こういったポジティブな良いことが起きないとわかるような態度をとる。決して、辛い、怖い、悲しい、痛い、苦しいといったネガティブな感情を起こさせてはならない。

