ペットの困った行動、もしかしたら脳の病気が原因かも!?

ごぞんじですか?
犬や猫にも認知症・てんかんがあります

当院は犬と猫の問題行動の診療に力を入れていますが、その問題とされる行動が脳神経疾患が原因の場合もあります。
なかでもペットの寿命が延びたことで増えた犬や猫の認知症や、発作を繰り返すてんかんが原因で飼い主を悩ます行動につながるケースが多く見られます。
行動診療を行う中で、脳神経の問題が疑わしい場合は「認知症・てんかん外来」として対応いたします。

脳神経疾患の疑いがある症状

歩けない、ふらつく、つっぱる、傾く、ひきつけ、けいれん、麻痺、意識がはっきりしない、体を痛がるなど

動物の脳神経内科

認知症の治療

犬や猫の認知症は認知機能不全症候群ともいい、ペットの寿命が延びたことで増えています。高齢化にともなって、認知する力や刺激に対する反応が低下したり、いったん学習した行動や運動ができなくなったり、記憶が曖昧になったりします。重度になると、いっしょに暮らすことが難しくなることもあり、飼い主様を悩ませる病気の一つです。当院では、所定の評価基準にしたがって診断し、環境の整備や行動修正、食事療法、薬物療法、介護など、生活の質を維持できるように、対策を検討します。

てんかんの治療

てんかんは、脳の細胞が過剰に興奮して発作を繰り返す、慢性の脳の病気です。代表的な症状として、痙攣(けいれん)が見られたり、ガクガク、ブルブル震えたりすることがあります。当院では、国際標準の診断基準にしたがって、犬の特発性てんかんを診断します。猫の場合も同様です。発作が起きた際の対応の仕方、お薬の使い方をレクチャーし、必要に応じて、追加の検査のために、適切な診療施設をご紹介します。

その他の脳神経疾患の対応

専門医療機関への窓口として、
初期診断とアフターフォローを行います

認知症・てんかん以外の脳神経疾患の診療もお受けしています。
当院ではまず初期診療を行い、CTやMRI、電気生理学的検査といった高度な検査や外科手術が必要な場合には、適切な診療施設をご紹介しています。紹介先での診療を終えた後、当院では指示に従い投薬治療や経過観察を行うなど、アフターフォローを行います。

患者様にとっては、専門医療機関は遠方であったり、敷居が高いと感じられることがあります。そこで、当院は身近な脳神経疾患診療の入り口としての役割を担います。初期診療後、そのまま当院で内科的管理をするか、他の診療施設を受診いただくかについては、飼い主様のご意向により選んでいただけますので、お気軽にご相談ください。

[ 診察のフロー ]

脳神経疾患にはこのような病気があります

脳疾患遺伝性変性性疾患/キアリ様奇形/水頭症/髄膜炎/てんかん(特発性、構造的)/頭部外傷/認知機能不全症候群/脳炎/脳血管障害/脳腫瘍
脊髄疾患外傷性脊髄損傷/くも膜憩室/脊髄炎/脊髄空洞症/脊髄係留症候群/脊髄腫瘍/脊髄軟化症/線維軟骨塞栓症/変性性脊髄症
脊椎疾患環軸椎不安定症/脊椎奇形/脊椎腫瘍/尾側頚部脊椎脊髄症/変形性脊椎症/変性性腰仙椎狭窄症/類皮洞
椎間板疾患椎間板脊椎炎/椎間板ヘルニア
末梢神経疾患外眼筋麻痺/顔面神経麻痺/喉頭麻痺/三叉神経麻痺/前庭障害/難聴
筋疾患運動誘発性虚脱/筋ジストロフィー/重症筋無力症/咀嚼筋筋炎/多発性筋炎/ミオパチー

受診前にお願いしたいこと

ご自宅での症状が分かるように
動画の撮影をお願いします

いつもと違う行動や神経症状の多くは、言葉で表現することがとても難しく、ご自宅での症状が病院では見られないことがほとんどです。そのため、緊急の場合を除いて、その症状をデジタルカメラやスマートフォンなどで動画撮影していただけると助かります。動画は診療する上でとても重要な情報となりますので、可能な範囲でご協力をお願いいたします。

受信前にスマホで撮影
スマホで動画撮影

当院で行う検査

当院では、以下の手順で初期診断を行います。確定診断については、状況によって紹介先の診療施設で行っていただくことがあります。


問診・一般身体検査・歩行解析 

まずは、飼い主様から症状の詳細をお伺いします。その際、動画があれば拝見し、それも参考に診察を進めます。歩行異常の評価と、視診や触診、聴診といった一般的な身体検査を行います。

問診・一般身体検査・歩行解析


神経学的検査・整形外科学的検査

神経学的検査は、脳神経疾患が疑われる際に行う最も基本的で重要な検査です。専用の検査シートに沿って、視診や触診、打診を利用して、病変部位が体のどこにあるのか、進行はどの程度なのかなどを見極めます。特別な機器を必要としませんので、動物への負担が少なくて済みます。
整形外科学的検査も同様に、専用の検査シートに沿って、骨や関節、靭帯の異常がないかどうかを調べます。

神経学的検査・整形外科学的検査

血液検査

全身状態を把握するために行います。また、神経症状は脳神経疾患だけでなく、その他の疾患によっても引き起こされることがありますので、それらを除外する目的もあります。

血液検査

X線検査

推定される病変部位の撮影を行います。骨折や脱臼などの整形外科疾患を除外します。脊椎腫瘍、椎間板脊椎炎、一部の椎間板ヘルニアを検出することができます。

X線検査

追加検査

必要に応じて、尿検査、血圧測定、内分泌系検査を行います。


\ 脳神経に関することを書いています /

コラム
神経の話
高齢犬の様子の変化を、飼い主は、老化と思うことがほとんどだ。脳神経系の老化と病気を分けるものとは何か。New!!
神経の話
首がピクピク、頚部痛。薬で軽快しても、X線検査でわかることは少ないので、疾患が潜んでいる可能性を飼い主に伝える。
神経の話
脳幹の病変は油断できない。生命にいつ危機が迫ってもおかしくないことを、しっかりと伝えつつ、少しでも緩和できるように薬を使っていく。
神経の話
見た目は皮膚病だったのだが、どうも違う気がする。皮膚に何かを感じているようだった。神経の痛みを和らげる薬で落ち着いた。
神経の話
抗てんかん薬の始め時を迷うことがある。そんなときは、点鼻薬を常備してもらえれば、飼い主も獣医師も安心できる。
神経の話
顔面のミオクローヌスは、てんかんを連想させる。ハエ咬み行動をする柴犬が抱えるのは、行動学的問題か脳疾患か。