子犬がしっぽを気にする。獣医師はどう考える?神経行動診療の診断プロセス。
子犬がしっぽを気にする。チラチラと後ろを振り返る。しっぽを触ると濡れていて、きっとなめているのだろうとわかる。傷があるとかはないので、咬んではいないようだ。しっぽもそうなのだが腰のあたりを触ると振り返る。何か気になる感覚でもあるのだろうか。でも触られて怒ることはないし、咬みついてくることもない。
性格は天真爛漫で温厚だ。人懐っこい。普段はイライラするとか葛藤を感じる様子は感じられない。ただ、幼犬の場合は行動の問題が最も多いので、並行して観察していく。しっぽや腰の皮膚、肛門に赤みがあるとかフケがあるとかはない。皮膚検査で異常なし。かゆみだけがあるかもしれないと考え、かゆみ止めを使ってみるが、それでも変わらない。しっぽをゆっくり上下左右や円を描くように動かしても、明らかに痛そうな反応はない。痛ければ怒るだろうし、それを繰り返せば疑心暗鬼になって触ってもいないのに怒るようになるはずだ。でも一定期間、家での様子を見てもらってもそういった行動は見受けられなかった。
次に考えるのはてんかん。焦点性発作だ。ここは最初から深追いはせず、可能性を念頭に置きながら、抗てんかん薬処方のオプションを持っておく。股関節などの整形外科疾患はどうか。後ろ足の筋肉は薄くはないし、歩き方もスムーズなので可能性は低そうだが、腰や骨盤の椎骨異常の存在については、X線検査で否定しておいた方がよさそうだ。では、過敏性症候群か。であれば脊髄空洞症や脊髄係留症候群、神経根圧迫などが考えられる。一度、神経痛に対する薬を処方したことがあるが、スッキリとは症状が治まらなかった。だが少し効いていた印象もあるので、同じ類の別のタイプの薬を試してみてもいいかもしれない。
というように進めていく。緊急性がないので必ずしもMRIをはじめとする高度な検査をすぐにする必要はない。内科的管理による反応を見ていくことは大切な判断材料の一つであり、こういった段階的な診療は、飼い主の負担と診断精度のバランスを考えた選択肢として、現実的に受け入れられるはずだ。MRIに進むかどうか、現在の症状とリスクに応じて最適なタイミングを一緒に考えていく。

