徘徊する柴犬(行動か疾患か、診断の進め方)

寝つかない、徘徊する、音に敏感になった。高齢の柴犬に最近見られるようになった、行動の変化。認知症を疑った。そこで、認知機能不全の評価を行った。結果は、14点。基準では、16点以上で認知機能不全を疑う。したがって、現時点では、認知症と言えるほどではない。

では、何か疾患があるのだろうか。最初に思い浮かべた疾患は、甲状腺機能低下症。血液検査を行った。しかし、基準値の範囲内。その他の項目にも、異常値は検出されなかった。血液検査でわかる範囲での異常は、見当たらなかった。

では、体のどこかに痛みがあるのだろうか。関節炎など、関節の痛みで動物の行動は変わる。痛みによって、眠れない、うろうろする、その不安からちょっとしたことに敏感になる、といったことは、十分にあり得る。しっかりと身体検査をしたいところだが、この犬は、触ろうとすると、抵抗が激しい。正確な評価が困難だった。

では、どうするか。今のところ、認知症の可能性は低いが、初期かもしれない。関節の痛みがあるのかもしれない。はたまた、脳神経疾患かもしれない。脳腫瘍、脳炎、脳梗塞、てんかんなどは、行動の変化を起こすことがある。それとも、高齢になってから現れる分離不安か。すべての可能性を無視しないで、行動を強化しないように薬を使いつつ、経過を注視していくことにした。