問題行動の診療(ある犬の吠え)【4】

前々回は、吠えのきっかけを2つに絞り込み、前回はその対策として自宅で飼い主に実施してもらった行動修正法を紹介した。

今回は、当院で行った対策を紹介する。

  • 来院後、ケージに入れる前に、スタッフが交流したり、遊んであげたりする。

社会的要求を満たすことを目的としている。

  • ケージの中に、普段使っているベッドを入れる。

ケージの中が快適に感じられるようにすることを目的としている。

  • ケージの前面にタオルをかけて、外を見えなくする。

人間が見えて吠えないように、刺激を制御することを目的としている。

  • ケージ内にいる時は、誰も近づいたり、覗いたり、扉を開けたりしない。

吠えに対して関心を与えないこと(消去法)はとても大切で、一度定着した吠えの反応は、時々刺激されることでさらに強化されてしまうので(間歇的強化)、無視をするという一貫した対応を取った。

  • 部屋の電気を消して、暗くする。

落ち着いていられる環境づくりを目的としている。

  • コングを与える。

ケージの中に楽しいことがあるようにする対策。コングの中に、フードやオヤツを入れて、できるだけ長い時間、そこに集中してもらう工夫をした。

来院時にスキンシップを取ると、とても嬉しそうにしており、トリミング中は、吠える声はほぼ聞こえなかった。迎えまでの間、ケージに入ってもらうと、すぐにコングに夢中になり、吠えなかった。ただ、思いのほかコングの中のフードを食べ切るのが早かったので、その後は吠えていた。

今回の診療で、飼い主による自宅や散歩時のトレーニングと、当院での対策によって、「吠えないようにできる」という希望が見えた。この良い兆しは、飼い主にとっても自信につながり、行動修正法を継続するモチベーションになるものと考えた。犬種による吠えやすさがあるので、吠えることをゼロにすることは難しいが、改良を加えながら継続することで、さらに改善していくことが期待される。何よりも、飼い主が我が子をより深く理解できたこと、今後もより良い関係性を築くことができそうだと実感できたことは、大きな収穫だったのではないかと思っている。

おわり。