問題行動の診療(ある犬の吠え)【2】

前回は、吠えのきっかけを5つ考えた。

  1. 要求(社会的、生物学的、環境的)または関心を求める行動
  2. 障壁に対する不満(閉じ込められていることへの不満)
  3. 分離不安
  4. 社会的促進(他の犬の吠えに同調した吠え)
  5. 来院や動物病院、トリミングに対する恐怖

カウンセリングと病院内での行動観察から、さらに絞り込みをした。

当初、病院のケージに入れるとすぐに吠え出すことから、狭い場所に入れられたくない、ここから出たいという「環境的要求」、あるいは「障壁に対する不満」が主ではないかと考えていたが、飼い主と一緒にいても、カウンセリングの間ずっと、そばを通るスタッフに寄って行ったり、スタッフのいる方を見て「ヒーヒー」と喉を鳴らし続け、そのうち遠吠えに近いような声量と吠え方で声を上げる様子が観察された。特定のスタッフに対する反応というより、人間であれば誰にでも同じように行動しており、トリミング中の様子をそっと観察してみても、窓から屋外の人影が見えると落ち着きがなくなり、吠えることもあった。

したがって、人間に対する興味と、そばにいたい、触れ合いたいという要求が強いのではないかと考えた。この行動のきっかけ(動機づけ)として、第一に、「要求または関心を求める行動」のうち、「要求(社会的要求)」を疑った。「障壁に対する不満」については、自宅でクレートの中にいることをしぶしぶ我慢はできるようだったが、完全に否定はしないことにした。

「分離不安」、「社会的促進」、「来院や動物病院、トリミングに対する恐怖」については、カウンセリングと行動観察の結果から、可能性は低いようだった。

以上のように、「社会的要求」と「障壁に対する不満」の2つに行動のきっかけ(動機づけ)を暫定的に絞り込めたので、これらについて、確認も含めて行動修正法を実施することにした。

つづく。