犬の成長は、ちぐはぐだ(ヘテロクロニー)。
家畜では、骨や筋肉、内臓、心理面などの発達は、それぞれバラバラに進行する。一斉に始まって、一定の速度で進行して、そろって完了するわけではない。発育のタイミングとスケジュールは、ズレている。人間と出会って、家畜化されたことで、このような変化が起きた。
3万年から1万5千年ほど前、犬は、人間と出会って、共に生活をするようになった。そして、心と体の成長のタイムスケジュールが変化した。つまり、体の発達は、開始時期が遅れ、ゆっくり進み、中断されるようになった。一方で、性成熟は、逆に早まった。こうして、成犬なのに見た目は幼犬、心も幼いまま、でも、早熟で、6ヶ月齢くらいで1回目の発情がやって来る体になった。
祖先に比べ、成長の速度や量、比、タイミングが変わる。犬種によって多少の違いはあるが、全体として、一貫性のない成長を示す。この現象を、「ヘテロクロニー(異時性)」と呼ぶ。動物の形態や生活史、行動に影響を及ぼすため、進化において、重要な現象だ。
犬は、人懐っこくて、無邪気。瞳は澄み切っている。まぶしいくらいだ。この半永久的な純粋さは、この現象によるところが大きいようだ。