犬は家畜化されて、変化した(家畜化症候群)。

人間が近づいても、怖がったり、攻撃したりしないでいられる動物の気質を、従順性と言う。従順性が比較的高いイヌ科の動物を集めて、交配を重ねた研究がある。アカギツネの中の、毛色が変異したギンギツネだ。50年後、体の形が徐々に変わっていった。

耳は垂れ、尾は巻き、柄はブチになり、顔は丸味を帯びて、鼻は短くなった。さらに、人間が近づいても、怖がらずに、尾を振り、くんくんと鳴き、顔をなめるまでになった。そして、仕草や目の動きを通して、人間の意図を読み取るようにもなった。まさに、現代の犬そのものだ。

犬は、オオカミの亜種とされている。かつて、犬の気質と形態は、オオカミに近かったはずだ。1万年前、犬の祖先が人間と出会ったことで、このギンギツネの実験と同じようなことが起こったのではないかと考えられている。

この身体的・精神的変化を、「家畜化症候群」と呼ぶ。家畜は、牛や豚、鶏だけではない。人間にその繁殖をコントロールされた動物を家畜と呼ぶ。犬は、家畜なのだ。