抗てんかん薬の始め時を迷うことがある。そんなときは、点鼻薬を常備してもらえれば、飼い主も獣医師も安心できる。
てんかんに対して、投薬を勧めるかどうか迷うのは、こんなときだ。中年齢の犬。今まで、1年に1回程度の発作が起きていた。それが、先月発作を起こし、そして、昨日から今朝まで落ち着かない様子で、小刻みに震えて、歩き回る。この行動は、以前にも発作を起こした、その直前に見られた症状だった。しかし、今回は、この行動の後に、発作は起きず、いつもの様子に戻った。さあ、抗てんかん薬の投与はどうするか。
1回の発作が長引く場合は別だが、1年に1回程度の発作であれば、原則として、抗てんかん薬は使わない。なので、このケースでは、それが前兆と言われる、発作に含まれる症状だと考えたとしても、それっきりまた1年間発作が起きないかもしれないので、何もせず、様子を見てもいいという判断になる。もちろん明日発作が起きるかもしれないのだが。
この場合、飼い主に説明する内容としては、次の2通りになる。心配であれば、抗てんかん薬を開始しても、まったく問題ない。ただし、一度始めたら、生涯飲み続けることになることを伝える。あるいは、何もせず様子を見てもいい。次に発作が起きた時に、連絡をくれるようにだけ伝えておく。そして、その発作の頻度が増えてくるようなら、抗てんかん薬を開始する必要があることも。
しかし、このとき、心配なことがひとつある。それは、どちらを選んだにしても、発作を起こしたときに、何もしなくていいのかという問題だ。そんなときのために、発作中にも投与することができる、点鼻薬がある。それを常備しておいて、発作に備える。何もしないで様子を見ることを選ぶ飼い主も、実際に発作が起きた時の心配はしている。点鼻薬は、それに応える安心材料となる。