犬の認知症は、客観的に評価することができる。
人間同様に、ペットの犬や猫にも認知症(認知機能不全症候群)があることは、飼い主に普通に認識されるようになってきている。ただし、認知症の症状や発症時期は、様々だ。我が家の犬が認知症かもしれないと、どの段階で疑えるかは、飼い主によって異なる。
部屋の隅で動けなくなる。呼びかけても反応が鈍い。夜中に吠える。わかりやすい認知症の症状と言えば、こんなところだ。でも、突然そうなることはなく、徐々に進行していく。初期や軽度な段階では、症状がはっきりしないために、なかなか気づけない。いわゆる、「老い」として気にも留めないことが多いようだ。怖がる。攻撃的になる。不安感が強くなる。このように、即座に認知症を想起しにくい徴候も認められることがある。
このような曖昧なケースでは、行動学的な問題や、加齢に伴って現れる、その他の疾患の症状の可能性もあり得る。総合的に見極めていかなければならない。そして、認知症の徴候が現れるのは、早くて8歳齢頃からだそうだ。思いのほか、若い。8歳というと、人間で言うところの40代後半。認知症になるなど、思いもしない年齢だ。
このように、認知症は、いつの間にか発症して緩やかに進行する。これを目ざとく検知するために、使用が推奨されているのが、認知機能評価シートだ。このシートは、認知症の症状を数値化して、軽度、中等度、重度の3段階に分類する。来院した犬を、8歳以上を目安に、頭の中の認知症のフィルターで引っかけながら診察し、疑いが高いようなら、シートを使って評価するようにしている。