眠れてますか? 夜を切り裂く犬の声。 「眠れない」を治療する。
夜中や朝方に犬が鳴く。鳴くというか、吠える。否、訴えると表現した方が正確かもしれない。声に感情が乗っている。だからこそ力がこもって大音量になる。まるで大砲を打ち放つかのようだ。腹の底から喉元までせり上がって発せられる衝撃波は、その軌道周囲の空気に波紋をもたらしながら、壁や窓に激突して反響する。
放たれた爆音は闇と静けさを切り裂きながら、寝ている人間の鼓膜に到達し、ついには意識を覚醒させる。飼い主の訴える、犬が吠えて眠れない。これが長く続くと、家族に睡眠不足という健康被害を引き起こす。そして音は家から外へ漏れていき、寝ている隣人の耳にも届いてしまう。こちらも長期間に及べば近隣トラブルに発展する恐れがある。
犬の病気の診察で来ているが、飼い主の言葉の行間にうっすらと陰りを感じ取ることができる。ここを見逃さずに深く掘っていくと、むしろこちらの方が濃い悩みの種であることがわかることがある。切実な問題である。犬のことも心配だが、そこから波及する家族の生活面における懸念もまた飼い主の体にまとわりついて離れない。だから軽視できない。
犬の夜中の吠えは、認知機能低下によって起こることもあるが、痛いとか痒いなど、身体機能の不具合で起こることも多い。あるいは、たまたま何かのきっかけで犬が目を覚まして、吠えてみたら人間が寄って来てくれた。それがうれしくて、毎日同じ時間に吠えるようになった、ということもあり得る。いずれにしても、この悪循環を断ち切るためにもまずは寝かせてあげることが大事だ。病気の治療と並行して、睡眠を誘導する薬を処方する。これで犬と飼い主の睡眠を確保する。

