高齢犬の夜鳴き。まだまだ元気なこの犬は、運動が減ってしまってエネルギーがあり余っていた。たくさん走らせる。単純だがこれが解決法だった。
その犬と散歩してみた。よく歩く。道に生えた草のニオイをくんくんかぎながら散策している。この犬の意識は周囲の環境に向けられていて、リードを持っているのが誰かなんて気にもしていない様子だった。
夜になると吠えるようになったという犬は落ち着いた様子だが、目の前に手をかざされるとすこしビクッとする。過敏な性格という印象は持ったがまあまあの反応だ。自宅を訪ねる人にはいつも激しく吠えるらしい。
自宅周辺の散歩のときに、この犬が近所の人を咬んだそうだ。そういう話も聞いて、余計にその人の恐怖心が増幅している。しかし、果たして、この犬は本当に”怖い”のだろうか。実際に見て、どうしてもそうとは思えなかった。ただただ元気な柴犬。遊びたい、動きたいという衝動が漏れ出ている。というわけで、飼い主たちのネガティブな認識を払拭するために、一緒に外に出て、様子を観察してもらったのだ。
怖いと言っていた人とも散歩をしてもらった。よく歩く。それどころか、走る走る。犬は夢中になって、その人を引っ張りながら、病院の周りを何周もしていた。犬は人間には目もくれない。咬む気なんてさらさらない。走れて大満足。楽しくて仕方ないといった表情をしていた。その夜、鳴かなかったそうだ。飼い主の事情で、毎日の運動が十分にできなくなったようなので、エネルギーがあり余っていただけなのかもしれない。近所の人を咬んだというのは、遊びたくて、かまってほしくて、ちょこっと口でアピールしただけだったのかもしれない。人間側のフィルターを取っ払うのも、我々の仕事なのだ。