ツールとエールを携えて、飼い主とペットの長距離マラソンに伴走する。それが行動診療。
当院の行動診療を受けられる方は、事前にたくさん勉強されている。それだけ悩みは深刻なのだ。いろいろ調べて得た情報をもとに、ご家庭で懸命に対策をされたり、トレーニングの学校に通わせたり、奮闘されてきている。診察時には、満身創痍の歴史が語られる。
それでも、解決しない。壁にぶち当たっているのだ。多くは、我が子の恐怖や不安を緩和させたり、認知機能を改善させたりするための、薬の力を求めている。薬を使わなければ、ここから先には進めない、という認識にまで到達している。
獣医師に与えられている、処方と調剤の資格には、強大な力が宿っていることを痛感させられる。頼って来てくれている。それに精一杯応えないわけにはいかない。どのサプリメントを、どの薬を、どういう順番で、どういう組み合わせで、どのタイミングで使うか。匙加減が重要だ。
飼い主の気持ちを汲みつつ、要望に沿いつつ、目的達成を見据える。そして、大事なことは、過度にがんばらせないことと、完璧を目指さなくてもいいということを、わかってもらうこと。動物を診ながら、動物を通して、飼い主のことも見ていかなければならないのだ。