エネルギー利用の鍵となる「通貨」を補給すると、高齢な動物の生理・運動機能を高めてあげることができる。

17歳の柴犬は、右側に回るように歩き、左の前足は裏返って、手の甲を床に引きずっている。家では、フードを食べようとしても、距離感がつかめないようで、ついばむようにして口が床にぶつかるという。認知症、脳梗塞、脳腫瘍、加えて、運動機能の低下の可能性が考えられた。

体の中には、「エネルギーの通貨」と例えられる物質がある。地球上の生物の体の中に広く分布する分子で、生物の細胞は、このエネルギーの通貨を経由して、物質のエネルギーを利用している。筋肉にしても、心臓にしても、脳にしても、消化管にしても、肝臓にしても、生命を維持するためには、エネルギーが必要だ。

加齢によって、このエネルギーの通貨は減少する。ということは、エネルギーの通貨を外から与えてあげたら、エネルギー利用が促進して、全身が活性化するはずだ。という理屈で、このエネルギーの通貨は、薬として存在している。1ヶ月間服用してもらった。動きはまだぎこちないが、徐々に元気になった。

脳血流が改善し、筋肉の収縮力が増強し、体内の代謝活性が高まったのだろう。根本的な解決に迫る手段ではないかもしれないが、高齢で生理・運動機能が低下した動物にとっては、少しは体を楽にする良い方法なのかもしれない。