猫の特発性膀胱炎の本質は、泌尿器系以外のところにある。

比較的若い猫が、頻尿や血尿といった症状を示すことは、よくある。特発性膀胱炎と診断をすることが多い。この猫の特発性膀胱炎は、膀胱炎という名称が付いていながら、泌尿器系の病気ではない。実態は、泌尿器系以外に原因があって、慢性再発性の下部尿路徴候(膀胱や尿道の症状)を呈する疾患である。

原因は、ある程度絞られている。過度のストレスである。生活環境からのストレスが、その猫の許容範囲を超えた時に、発症する。猫の特発性膀胱炎は、精神の問題で発生する不安神経症なのである。快適ではないのだ。彼らの生活が。かつては、細菌性の膀胱炎にならって、抗生物質を処方したり、炎症を抑えようと、消炎剤の処方をしたりした。だが、今、治療は、精神を安定させる方向へ、舵を切っている。

8歳の雌の猫は、若かりし頃から、頻尿と血尿を繰り返していた。神経質で、痩せていて、見るからに不安傾向が強かった。特発性膀胱炎として、ずっと消炎剤と止血剤を使っていた。一向に良くならない。しかし、猫の特発性膀胱炎の、真の病態にアプローチした途端、この猫の生活の質は一変した。

薬を変えたら、覿面に効いた。不安感と痛みを緩和する薬だった。膀胱炎は、慢性化してくると、神経自体に痛みが生じ始める。そこにも効いたのだろう。ストレスは、自律神経やホルモン、免疫に支障をきたす。いずれ他の病気が現れるかもしれない。パンドラの箱が開けられてしまったとしても、最後に箱の中には希望が残るように、猫のトイレ、睡眠や休息の場、運動の質に、改めて目を向けてみてほしい。