犬がなぜ攻撃行動を起こすのかについて、情報の背景を知って、選び取ってほしい。
パラダイムシフトは起きている。
犬の攻撃性の治療には、「犬の優位性を抑える」とか、「主従関係を重視する」という考え方を支持する傾向が、いまだに少なからずある。
これは、これまで、” 飼い主より先に犬に食事を与えたり、散歩で飼い主の前を歩かせたりといった、犬を甘やかした行為が、犬の優位性を助長し、攻撃行動を増加させる ” と考えられてきたことが影響しているからだとされている。
こういったことが、犬にまったく当てはまらないことは、周知の事実であり(→https://shibusawa-ah.com/cate3/animalbehavior004/)、科学的な動物行動学を実践する人たちによって、着々と歴史は塗り替えられてきている。あとは、この厳然とした事実が、どれだけ広まっていくか、さらに言えば、いかに早く広めていくかにかかっている。
犬の攻撃行動や恐怖症、不安障害は、脳内のセロトニン濃度と関係することがわかっている。攻撃的な犬の血液中のセロトニン濃度は、攻撃性のない犬に比べて有意に低く、さらに、脳脊髄液中のセロトニン代謝産物の濃度も、攻撃的な犬は、低い。そのため、脳内のセロトニン濃度を調整する薬剤は、犬の攻撃性をコントロールする上で、有効とされている。犬は、過剰なストレスを持続的に受けると、脳内のセロトニンをはじめとする脳内伝達物質に変化を生じる。持続的なストレスがかかることで、脳内のセロトニン濃度や脳の機能的変化が生じ、攻撃行動が発現すると考えられている。
したがって、ありもしない主従関係を構築しようとして、威圧的な嫌悪刺激(チョークチェーンで首を絞める等の体罰や、大きな音を立てる刺激など)を用いてトレーニングを行うことは、犬に痛みや恐怖感といった強いストレスを与えてしまい、脳内のセロトニン濃度を低下させ、かえって攻撃行動や不安傾向を強めてしまうことになる。
大事なことは、情報リテラシーを鍛えること。そして、たとえ間違った情報を妄信して、その手段を施してしまったとしても、怯えた悲しげな犬の眼を見て、その手を止め、今していることは、果たして正しいことなのか、自らを省みることができるかどうか、なのである。