脳幹の病変は油断できない。生命にいつ危機が迫ってもおかしくないことを、しっかりと伝えつつ、少しでも緩和できるように薬を使っていく。

脳をブロッコリーに例える。ブロッコリーの頭の部分は、つぼみなのだそうだが、その濃い緑色のつぼみから、薄緑色の茎がつながっている。つぼみを大脳、茎を脊髄とすると、つぼみに接する茎の部分は脳幹である。脳幹は、視覚、聴覚、呼吸など、生命維持に重要な役割を担っている。

ふらついて、なんだか調子が悪いとのことで来院した高齢なヨーキーは、診察室を歩かせると、大きく右に回っていた。神経病を疑ったが、飼い主にはちょっとした不調に見えていたようで、希望により様子を見ることにした。1週間後、眼が見えていないようだとのことで、再び来院した。

MRIで、脳幹に病変が見つかった。ただ、腫瘍なのか、炎症なのか、感染なのか、確定できない結果となった。いずれにしても、場所が悪い。生命の危機が間近に迫っていると感じた。脳圧を下げ、炎症や腫れを引かせ、感染を抑えるため、使える薬をすべて使う。

心苦しいが、突然に最期を迎えてしまう可能性があることを飼い主に伝えておかなければならない。検査でわかること、わからないこととあわせて、症状や視診、触診で、ある程度、病変の位置を推測できるので、病気が進行するとどうなるかを、なるべく事前に説明して、飼い主に理解してもらうことが大切だ。