犬の脳炎は、症状を出したり出さなかったりするので、けいれんが増えたときは、MRIと脳脊髄液検査をした方がいい。

若い小型犬がけいれんを起こした。一般的な検査で、特発性てんかんと暫定的に診断し、抗けいれん薬を開始した。しばらく安定していたが、あるとき、群発発作を起こした。ヒヤッとした。もしかして、違うのか、と。脳炎かもしれない。若い小型犬ならあり得る。

臨床的沈黙野。何かが起きても症状が現れにくい場所が、脳の中にはある。何かを持ちながら、騒がず黙って、すぐには声を出さない。脳炎は、そういう振舞いをすることがある。一瞬よぎった疑惑。こっちの頭の中にも小さな火が点いてしまった。

MRI検査と脳脊髄液検査をしてもらった。特発性てんかんと確定した。ひとまず、他の病気がなくて良かった。ほっとするような着地感。もうこれ以上、あれこれ逡巡しなくていい。犬の頭の中には、炎症がないことがわかった。こっちの頭の中に灯っていた火も、消えた。

薬の変更は必要ない。これからは、今の薬をベースに、用量を調節したり、別の薬を併用するかどうか、病状に応じて決めたりするだけでよくなった。