犬の髄膜腫の治療成績は、年々向上しているので、手術は選択肢として現実味を帯びてきている。
高齢な犬がけいれんを起こしたり、さらに、発作がないときにグルグルと回ったりするとき、脳腫瘍か、脳炎か、脳梗塞か、だいたいこの3つが予想される。構造的てんかんと考えて、抗てんかん薬を開始する。飲み薬と緊急用の点鼻薬。構造的てんかんとは、脳の形態や生理機能に変化が生じて起きる、慢性の脳の病気のことだ。
MRIなどで脳の検査をするのが次の手順なのだが、飼い主には、当然、心配事がある。これから何が待ち受けているのだろうか、である。検査の結果、脳炎や脳梗塞ということであれば、体に大きな負担をかけずに済むかもしれない。しかし、脳腫瘍だったとしたら、手術をするのか、放射線を照射するのか、抗がん剤を投与するのか、それ以外の薬だけで緩和するのか。
どの道を進んでも正解なのだが、難しい選択だ。分岐点まで慎重に歩みを進めるのもわかる。我が子のために最大限のことをしてあげたいからこっちを選ぼう。高齢な体への負担が気がかりだからあっちを選ぼう。重い現実を切り開きながら突き進むか、重い現実があってもなくてもそっと静かに包み込むか。どちらも力強い決意が必要だ。
犬でも猫でも原発性脳腫瘍のうちの約半数は髄膜腫だ。おおむね7歳齢以上の小型犬がてんかん発作や旋回を示した場合、転移性の脳腫瘍を否定できれば50%の確率で大脳に発生した髄膜腫だろう。犬の髄膜腫の治療成績は年々向上しているようで、外科手術単独でも2年くらい生きられるそうだ。そんな情報を拾い続けながら、苦渋の一歩を踏み出す飼い主とともに前へ進むのだ。