犬の髄膜腫の治療成績は、年々、向上しているので、手術は、選択肢として現実味を帯びてきている。
13歳のトイ・プードルが、突然けいれんを起こした。さらに、発作がないときに、右側にグルグルと回る。脳腫瘍か、脳炎か、脳梗塞か。だいたいこの3つが予想される。構造的てんかんとして、抗てんかん薬を、早速、開始した。2種類の飲み薬と、緊急用の点鼻薬。構造的てんかんとは、脳の形態や生理機能に変化が生じて起きる、慢性の脳の病気のことだ。
MRIなどで脳の検査をするのが次の手順なのだが、飼い主には、当然、心配事がある。これから何が待ち受けているのだろうか、である。検査の結果、脳炎や脳梗塞ということであれば、体に大きな負担をかけずに済むかもしれない。しかし、脳腫瘍だったとしたら、手術をするのか、放射線を照射するのか、抗がん剤を投与するのか、それ以外の薬だけで緩和するのか。
どの道を進んでも正解なのだが、難しい選択だ。分岐点まで慎重に歩みを進めるのもわかる。我が子のために、最大限のことをしてあげたいから、こっちを選ぼう。高齢な体への負担が気がかりだから、あっちを選ぼう。重い現実を切り開きながら突き進むか、重い現実があってもなくても、そっと静かに包み込むか。どちらも力強い決意が必要だ。
犬でも猫でも原発性脳腫瘍のうちの約半数は、髄膜腫だ。おおむね7歳齢以上の小型犬が、てんかん発作や旋回を示した場合、転移性の脳腫瘍を否定できれば、50%の確率で、大脳に発生した髄膜腫だろう。犬の髄膜腫の治療成績は、年々向上しているようで、外科手術単独でも、2年くらい生きられるそうだ。そんな情報を拾い続けながら、苦渋の一歩を踏み出す飼い主とともに、前へ進むのだ。