振り返るプードル(神経根徴候)。

一日のうちに、何度か突然後ろを振り返って、唸りながら腰のあたりをガジガジと咬む。その行動は、目が覚めている間だけでなく、眠っている時にも起きていた。眠っているのに、急に起き上がって、咬む。診察に訪れたのは、推定5歳のクリーム色のトイプードル。保護犬だった。右側の腰の一部は、毛が薄くなっていて、そこにはカサブタができていた。

結論から言うと、神経疾患だった。レントゲンで腰のあたりを撮ってみたら、1ヶ所だけ、腰椎と腰椎の間が明らかに狭くなっていた。神経が刺激されていると考えてもおかしくない所見だった。咬んでいた皮膚の場所とちょうど一致する。姿勢や、気圧の変化によって、痛みが生じていたのかもしれないし、あるいは、ピリピリするとか、痺れるような感覚が、ときどき走っていたのかもしれない。

最初は、保護犬という出自に引っ張られて、心理的・行動的な原因が頭から離れなかった。そのうち、右後ろ足を痛がる素振りが見られるようになり、太ももの筋肉が萎縮してきた。体重をかけられていない証拠だ。原因は別にある。脊髄は、腰のあたりから馬の尻尾のように枝分かれして、その一部は、腰椎と腰椎の間を通って、右後ろ足へと向かう。その神経が障害されているようだった。

毎日のように、後ろを振り返っては、自分を傷つける行動。しかも、眠りを妨げられるほどの。その辛さは、どれほどだっただろうか。察するに余りある。神経の痛みを緩和させる薬で、良くなった。先入観を傍らに置き、基本に忠実を心がける。診断の本道を行くことが、結局は早く動物を楽にする。プードルは、今は、楽しく散歩に行き、ぐっすりと眠れて、穏やかに暮らしている。