高ぶる黒猫(子猫のけいれん‐3‐)
3週間後、発作はまったく見られなくなっていた。念のために手元に置いてもらった併用薬は、一度も使わなかったとのこと。メインの抗けいれん薬だけで安定したようだ。これで、ひとまずは落ち着いた生活を送ることができる。ただし、これで解決ではない。やっとスタートラインに立ったに過ぎない。
猫のてんかんの診断は、国際標準の犬のてんかん診断の手順にしたがって、まずは進めるとされているが、この猫の場合は、基準を初めから逸脱していたため、犬で基準を満たした場合に暫定的に診断することのできる、「特発性てんかん」ではない。ちなみに、「特発性てんかん」とは、遺伝性、あるいは、おそらくは遺伝的な背景をもつてんかんのことを言う。
そもそも、猫で「特発性てんかん」が発生する割合は、犬と比較して低い。若くても、何かしら脳に起きた病気が元になって、発作が見られることの方が多いとされている。これは、「構造的てんかん」と呼ぶ。この猫の場合、抗てんかん薬で発作は抑えられているものの、元の原因が有るのか無いのかにまでは、まだ迫れていない。発作が抑えられていることと、脳の病気が特定されていることは、別の話。
脳のMRI検査や脳脊髄液検査が、次に選択される検査だ。飼い主には、抗てんかん薬を続けてもらいつつ、今後、発作が起きた場合の頻度や重篤度、さらに、普段の猫の行動や性格の変化、歩き方や姿勢の異常が現れないかを十分に気をつけて見てもらう。少しでもいつもと異なる様子が見られれば、究明に向かうかどうかを相談しなければならない。