分離不安・恐怖症・攻撃行動・常同障害。犬の精神的問題に抗うつ薬を使う理由。
常同障害や統合失調症を発症している人の脳は、その一部が過剰に興奮してアイドリング状態となっていることがわかっている。つまり、一度火がついたエンジンが止まらないのである。脳の細胞に発生した電気が、細胞から細胞へと延々と伝わっていく。スタートしたら最後。誰も止めることのない、終わりなきサーキットのようなものだ。
こういった患者の脳の特定の部位には、構造的あるいは機能的な異常が存在すると報告されている。よりミクロな世界に視点を移せば、セロトニンはじめ神経を伝播していく物質の遺伝子にそもそも個体差があって、特にそれが少ない場合に問題が生じるということらしい。
セロトニンの量が少ないと、脳内を走る電流にブレーキをかけられなくなる。そうして引き起こされる興奮は、いつまでも終息しない。その結果、常同障害や統合失調症を発症する。これと同じことが犬でも起こるとされていて、そのスイッチを入れてしまうきっかけとなるのが、ストレスや葛藤だ。
犬の脳の構造は人間ほど複雑ではないため、統合失調症は起こらないとされている。犬で問題となるのは、常同障害の他に、分離不安、恐怖症、攻撃行動である。トレーニングに限界のある犬は、脳内で分泌されるセロトニンがおそらく少ない。なので、分泌された少ない貴重なセロトニンが、分解されて消えて行かないように、それを阻止する薬を使う。それが抗うつ薬である。