猫のおなかの脱毛した皮膚。何かストレスを感じているのかもしれない。猫同士の関係性を見極めて、生活環境に手を加える。

3歳のメスの雑種猫のおなかの皮膚に、直径3㎝の楕円形の脱毛が見つかった。その脱毛した皮膚は、全体的に湿っていて、端の方は少し赤く、薄黄色くもなっていて、ほんのり化膿している様子だった。舐めている。この猫の行動が読み取れた。舐めて軽度な炎症を起こした皮膚。舐性皮膚炎だ。泌尿器や消化器の症状はない。つまり、おなかの中に何か原因があって、それを気にして舐めている、ということは今のところ考えにくい。そうすると、原因は皮膚にあるか、心の中にあるか、である。

皮膚炎は、季節性でも食物でも、アレルギーの症状である可能性はある。春と秋なら季節性。通年なら食物。大まかに分ける。首や顔にも皮膚炎があれば、アレルギーであることは濃厚なのだが、毛をかき分けてよく観察しても、どこにも炎症は見当たらない。おなか以外の皮膚に症状はない。ということは、アレルギーかどうかの答えは、ここでは出ない。そんな話を飼い主にしながら、患部を消毒して外用薬を塗る。

並行して、ちょっと違う方向からアプローチしてみる。この家庭には、同居のオスの雑種猫がいる。2歳だ。若いからやんちゃ、ということもあるが、性格的に外交的らしい。皮膚炎のある当の猫は内向的だ。年下に絡まれることがよくあって、仕方なくそばにいたり、一緒に寝たりしているようだ。受け身なのである。同じ場所にいて仲が良さそうに見えるが、これは、決して仲が良いと言える関係性ではない。想いは一方通行。きっと、お互いが満たされていない状況だろう。

そんな中、飼い主が一方の猫の脱毛に気づいた。パーソナリティがかけ離れた猫同士は、基本的にうまくいかない。うまくいかせようともしない。距離をとるだけである。その距離がとれない状況に陥ると、こうして内気な猫の方に症状が現れる。泌尿器や消化器の症状が出てこないか、皮膚の炎症が消えるかどうか、様子を見てもらうのと同時に、隠れられる場所とそこまでのルートをつくる。プライバシーや安全が守られることほど、猫にとって大事なことはない。