排尿でも排便でも、トイレの失敗は生きにくさの表れなのかもしれない。猫の暮らしぶりから心模様を察してあげよう。

猫がどの程度ストレスを感じているかは、飼い主にはわからないことが多い。いつもと変わらないけど…、そんな風には見えないけど…。診察室で飼い主からこのような言葉をよく聞く。しかし、猫自身はサインを出していることがある。その一つがトイレの失敗だ。失敗とは、トイレ以外の場所で排便あるいは排尿をしてしまうことだ。これは、明らかに正常とは異なるサインである。絶対に何か原因があって、猫はそういう行動をとっているはずなのだ。

ほとんどの飼い主には、トイレの失敗とストレスは結びついていない。飼い主は、なんでだろう、困ったな、と思いながらも、手を打てずに月日が流れている。どちらにしても、失敗があれば、まずは病気の有無を見極める。排尿の失敗の場合は、膀胱炎だ。手始めに細菌性か特発性かのどちらかを区別する。特発性とは、用語的にはこれといった原因が特定できないことを表し、言ってみれば原因不明である。ただし、特定ができないだけであって、なんだかさっぱりわからないという意味ではない。いくつかの要因ははっきりしていて、一つに絞れないというだけである。

猫の頻尿と血尿はよくある症状だ。高齢のメスで初発であれば細菌性膀胱炎を疑うことが多い。しかし、飼い主からよくよく話を聴いてみると、もっと若い頃からトイレの失敗をしているという情報が得られることもある。そういう経緯があるのなら、高齢でもその排尿の失敗はそれに関連している可能性はありそうだ。猫がトイレを気に入っていないか、あるいは毎日を安心して暮らせていないか…。

失敗に至る要因は複数あるので、それぞれに対してアプローチをしていくことになる。これを飼い主に自宅でやってもらうのである。排泄の失敗は、トイレの大きさ、砂の種類、置き場所、個数がポイントだ。トイレの理想形を飼い主に伝授して、できる範囲で改良してもらう。それと、タンスや冷蔵庫の上に箱やハウスを置く。部屋にキャットタワーを設置。猫の習性に合わせて、高いところに登れるようにするのだ。そして、隠れ家を作る。押入れに居場所があってもいい。