排尿でも排便でも、トイレの失敗は、生きにくさの表れなのかもしれない。猫の暮らしぶりから心模様を察してあげよう。

猫がどの程度ストレスを感じているかは、飼い主にはわからないことが多い。いつもと変わらないけど…。そんな風には見えないけど…。診察室で飼い主からこのような言葉をよく聞く。しかし、猫自身はサインを出していることがある。その一つがトイレの失敗だ。失敗とは、トイレ以外の場所で排便あるいは排尿をしてしまうことだ。これは、明らかに正常とは異なるサインである。絶対に何か原因があって、猫はそういう行動をとっているはずなのだ。

ほとんどの飼い主には、トイレの失敗とストレスは結びついていない。飼い主は、なんでだろう、困ったな、と思いながらも、手を打てずに月日が流れている。どちらにしても、失敗があれば、まずは病気の有無を見極める。排尿の失敗の場合は、膀胱炎だ。手始めに、細菌性か特発性かのどちらかを区別する。特発性とは、用語的には、これといった原因が特定できないことを表し、言ってみれば、原因不明である。ただし、特定ができないだけであって、なんだかさっぱりわからない、という意味ではない。いくつかの要因ははっきりしていて、一つに絞れない、というだけである。

14歳のメス猫の頻尿と血尿。この年齢で初発であれば、細菌性膀胱炎を疑うことが多い。しかし、よくよく話を聴いてみると、もっと若い頃から排便の方の失敗をしていて、飼い主はあれこれとトイレの工夫をしていたが、一向に治らないとのことだった。そういう経緯があるのなら、今回の排尿の失敗は、それに関連している可能性はありそうだと感じた。猫がトイレを気に入っていないのかもしれない。はたまた、毎日を安心して暮らせていないのか…。

失敗に至る要因は複数ある。そのそれぞれに対してアプローチをしていくことになる。これを飼い主に自宅でやってもらうのである。排便の失敗の方も、病気さえ否定できれば、アプローチは排尿の失敗のときと同じだ。トイレの大きさ、砂の種類、置き場所、個数。トイレの理想形を飼い主に伝授して、できる範囲で改良してもらう。それと、タンスや冷蔵庫の上に箱やハウスを置く。部屋にキャットタワーを設置。猫の習性に合わせて、高いところに登れるようにするのだ。そして、隠れ家を作る。押入れに居場所があってもいい。