吠えに対して、エネルギー発散不足の解消に取り組んでいた犬。不安や恐怖の感情も持ちあわせていることがわかり、別のアプローチも追加した。

スケジュールを立てる能力を持っている動物は、人間だけなのだそうだ。誰と会う、何をする。未来を計画して、期日を決める。これが、人間と他の動物を分ける特徴の一つらしい。他の動物は、先を見越した行動はとらないとされている。ただし、「予期」することはできる。

例えば、雷の日以降、雷が鳴っていなくても、窓の外に向かって吠えることがある。これは、そのときの雲の様子や風の音など、雷と同時に発生していた他の事象までも記憶し、それに似た状況に遭遇したときに、雷を想起するというものだ。雷に対してネガティブな感情が沸き上がり、吠える。パブロフの犬しかり、経験などで後づけに獲得された条件反応だ。

2歳のミックス犬は、吠えに対して、エネルギー発散によるストレス解消を目的に、運動量や家族と関わる時間を増やしてもらっていた。元々、音や何かの気配に敏感な性格であることはわかっていたが、雷の件を飼い主から聴いたとき、アプローチを変えなければ、と思った。

不安や恐怖の要素が顔をのぞかせたのだ。見過ごせない。単にエネルギーの発散不足だけであれば、これまで通りの対応でよかったのだが、それだけを続けていても、おそらく一向に改善はないだろう。ということで、薬物療法を開始した。あわせて、防音対策と、身を隠すことのできる場所の確保。複数の感情と行動が複雑に絡み合っていたようで、後になって、別の動機が明らかになった。