若い犬の尾追い行動。早めに気づいて、飼い主の関わり方を適切に変えることが、将来の問題行動を防ぐことに役立つ。

5ヶ月齢の小型犬MIXが健診で来院した。ひとしきり診察をして、その終わり際に、飼い主からちょっとした相談を受けた。ぐるぐるとしっぽを追いかけることがあって、それがなぜなのか、ということだった。尾追い行動だ。尾追い行動は、柴犬で見かけることが多いが、それ以外の犬種でもときどき見かける。

飼い主がポロッとこぼした少ない情報だけでは、その行動にどういった意味があるのかを、すぐに解釈することができなかったので、そのときの前後関係をさらに詳しく聞いてみた。それは、遊びたいけど、遊んでもらえない状況、とか、「ダメ!」と言われたときとかに、ぐるぐる回るということだった。遊びの最中に、楽しくてしっぽを追いかけるということはありえるのだが、そうではないようだった。

遊びたいとか、気が向くことをするだとか、ポジティブな感情があるところに、外からストップがかかって、遊べないとか、止められたとか、ネガティブな感情が沸き上がる。相反する感情が同時に存在し、どちらを取るか迷う心理状態。これを葛藤と言う。その尾追い行動は、葛藤から起きているようだった。気持ちをどこにぶつけていいかわからない。ある意味、こうしたイライラを表現した結果として、この犬はぐるぐる回ったのだろう。

一見、スルーしそうなのだが、葛藤ということであれば、放置しておくと、常同行動や常同障害へ発展させてしまう恐れがある。飼い主に関わり方をアドバイスした。遊ぶ時間を決めて、犬が疲れるまでめいっぱい遊ぶ。そして、「ダメ!」と制止したり、叱ったり、罰を与えることをNGにした。早い段階で気づいてあげて、飼い主に対応の仕方を変えてもらう。日常診療の中で、将来の問題行動の芽を摘むのだ。