パニックになった猫をきっかけにして、もう一頭の猫との関係性が悪化したが、文脈に沿った正当な方法をいくつか重ねることで、早く改善した。
2頭の猫の関係がこじれた。それは、ひとつのきっかけからだった。自宅から病院に連れて行こうとして、1頭をキャリーケースに入れたら、中でパニックを起こした。飼い主も慌てて、キャリーケースからすぐに出した。それを目撃したもう1頭が、驚いて怒り出した。2頭の激しい喧嘩が始まった。
不安、恐怖、葛藤。沸き上がった感情は、2頭の間で、火種となってくすぶるようになった。2頭の距離が近づけば、一触即発。一方が軽くジャブを繰り出し、牽制する。パニックになった方の猫は、比較的そんなにトラウマになるほどの精神的ダメージが残らなかったのか、もう一方の猫にくっついたりグルーミングしたりして、積極的に関わろうとする。しかし、迫られる方は、嫌な記憶がよみがえる。
トイレに行った時もそうだ。パニックを起こした方は、あのときキャリーケースの中で失禁していた。そのときの尿臭が、もう一方の猫の頭の中に紐づいたのだろう。トイレに近づくと、当時の光景がフラッシュバックする。そうして攻撃が始まり、喧嘩に発展する。対策を打った。トイレの数を増やして、砂を鉱物系に替えて、一つのトイレに集中しないようにした。
さらに、パニックのきっかけとなったキャリーケースを、一切見せないようにする。2頭が接触したとき、攻撃が始まりそうな瞬間を見極めて、気をそらす。ストレス緩和効果のあるフェロモン製剤を、部屋の中に充満させる。抗不安薬を服用する。いくつか対策を重ねた。1ヶ月後、2頭の関係性はすっかり良くなって、攻撃行動はまったく見られなくなった。2頭の心は、思いのほか早くほぐれたようだった。