競い合うプードル(社会的促進)。

複数の犬に一斉に吠えられると、圧倒される。ペットホテルで預かった同居のトイ・プードル2頭は、若さ故なのか、元気に吠える。同居だから、2頭一緒の方が落ち着くかと思って、同部屋にした。彼らは、人の気配や物音に反応して、ほぼ同時に吠え出す。小型犬の甲高い吠え声は、眼の奥が揺れるほどに響く。同時に、感情が負の方向に揺さぶられる。

あるとき、部屋の掃除のために、この2頭を別々の部屋に移動した。すると、1頭は、それまでと同じように、人が見えると吠えたが、もう1頭は、吠えなかった。丸くなって大人しくしているだけだった。もしや。この吠えなかった1頭は、吠えた1頭につられて吠えていたのではないか。

そこで、再びこの2頭を同部屋にして、様子を観察してみた。人が目の前を通りかかったとき、やはり2頭とも吠える。ところが、吠え始めのタイミングに少しズレがあることがわかった。さっきひとりにされて吠えなかった方の犬が、吠え出すときに、一拍遅れる。やはりそうか。社会的促進だ。群れで暮らす動物の一つである犬は、互いに競い合って、行動がより顕著になる現象が見られることがある。1頭が最初に吠えて、その後に続けてもう1頭が吠える。そうして競い合うようにして、延々と吠え続ける。

では、最初に吠える犬は、なぜ吠えるのか。発散不足、閉じ込められることへの不満、関心を求めている、警戒している、様々な刺激に反応している、などが考えられる。ここから先は、さらにしっかりとした観察とカウンセリングが必要だ。ひとまず、この2頭の場合、吠えの音量と頻度を減らすためには、別々の部屋にすればよいことがわかった。