「やさしさ」が不安を育てる? ― 真の意味で犬の気持ちに寄り添うために。

雷が鳴ったときに愛犬が震えていたら、つい「大丈夫だよ、怖くないよ」と声をかけて抱きしめたくなるのが飼い主の気持ちだろう。怖い思いをしている犬をなだめる。そうするのはよくわかる。

実はその関わり方は、「怖がる理由がある」、「やっぱりこの状況は異常なんだ」と犬に認識をさせてしまう結果となる。犬が示した行動に対して人間がリアクションすることは、報酬になってしまう。行動が強化されることになるのだ。

なぜそうなるのか。それは、犬は言葉の意味ではなく、「声のトーン」や「飼い主の行動」、「注目」などの非言語的な要素を読み取るからだ。飼い主の「心配そうな表情」や「過度なかまい方」が犬の不安を“正当化”してしまう。

では、どうするべきか。それは、怖がっているときこそ、落ち着いて静かに寄り添うこと。行動を強化しないために、あえてなぐさめず、平常心でそばにいる。安心できる環境(クレートやブランケット)を用意する。「怖いことじゃないよ」という、何事にも動じない冷静な雰囲気をつくる。

でも、「なでてあげることがダメ」と言われると心苦しい…それもわかる。だからこそ、「愛情の正しい届け方」を学ぶのである。それが真のやさしさにつながることになる。犬の不安を減らすために、飼い主の冷静さが何よりの薬なのだ。