その発作、原因は”音”かもしれない。聴原性反射性発作。音で始まる猫のもう一つのてんかんを知っていますか?
入院室にある個室の扉の開け閉めに反応してビクッとする。ステンレス同士がこすれたり当たったりして音が鳴るときだ。コントロールが崩れたてんかんの調整をするために入院中だった。中にいる猫のそんな怯えたような姿を見て、もしや音に対して過敏なのでは?と感じた。そっちのタイプのてんかんなのかとひらめきが走った瞬間だった。ちらっと視界に入った蚊を手のひらでパッと捕まえたくらいのスピードで、大事なヒントをスルーせずに意識化できた気がした。
猫はそもそも犬と比べててんかんの発生率が低く、猫全体の0.5~1%程度だと言われている。そのおおむね6割くらいは何かしら別に原因がある構造的てんかん、あるいは反応性てんかんで、残りの4割程度が遺伝性や先天性の特発性てんかんであるとされている。この猫は特発性てんかんとして投薬をしていた。通常、特発性てんかんと診断するに足る根拠を得た段階で、猫で一般的に使われる薬を即日開始するのがセオリーである。この場合、特発性てんかんの中の側頭葉てんかんを対象としている。
しかし、特発性てんかんには別のタイプのてんかんもある。それが聴原性反射性発作だ。高い音や金属音に反応して起こる発作で、音が耳に入った瞬間にビクッビクッと電撃的な緊張が全身に走る。入院時に見かけた猫の姿はまさにこれだった。側頭葉てんかんで使われる薬は、猫にとって副作用が少なく、長期にわたって使ってもそれほど心配のない薬である。そのため少し効きが悪いなと感じていても、効果がしっかり得られるまで増量一辺倒になりがちになる。
一方で、聴原性反射性発作に対してこの薬を使っても、得られる効果は不十分である。それは、第一選択薬が異なるからである。ところが、側頭葉てんかんも聴原性反射性発作も、どちらも最終的には全身のけいれんに行き着くので、けいれんしている姿を目撃しただけでは区別がつかないのである。なので、てんかんの投薬中にいつまで経ってもいまいち効きが悪いなと思ったら、けいれんを起こし始める前の様子や、普段の生活の中で音に敏感ではないかどうかをあらためて見直した方がいい。

