「クチャクチャ」「走り出す」― 猫の側頭葉てんかんの特徴と危険性について知っておこう。
口をクチャクチャしたり、瞼など顔が引きつったり、猫の発作で見られる症状には特徴がある。このとき発作の焦点は大脳の側頭葉で、側頭葉てんかんと呼ばれる。側頭葉には、聴覚を認識する聴覚野や、記憶や学習に関連する領域、辺縁系、特に情動などと関係する領域が存在する。海馬や偏桃体がそれにあたり、そのためシャーシャー怒り出すこともある。
そういったことから猫の側頭葉てんかんは、海馬や偏桃体を焦点とする場合には辺縁系発作、口や顔面の動きを伴う場合には口部顔面自動症、全身に自動症が現れる場合は跳ねたり走り出したりしてしまうので疾走発作などと、それぞれ異なる名称で呼ばれたりする。いずれにしても側頭葉の神経細胞に異常発火が生じて起こる側頭葉てんかんである。
側頭葉には聴覚野が含まれるが、金属音などの高い音に鋭く反応する聴原性反射性発作は別ジャンルのようだ。側頭葉てんかんと聴原性反射性発作では、使用する抗てんかん薬の中で、第一選択薬が異なるので、そう考えると区別するのは納得がいく。
側頭葉てんかんの一つである疾走発作は、とても危険な要素をはらんでいて、怪我や事故の原因になり得る。家の中で突然走り出していろいろな所にぶつかる、あるいは引っかかる。さらには勢いあまって網戸を破って外に出てしまうなんてこともある。猫では、発作そのものによって脳神経細胞にダメージが起こることとは別に、このように命を危険にさらしてしまう恐れのあるタイプも存在する。放置しない、そしてなるべく発作の頻度を減らすために、薬の厳密な調整が大切だ。