発作と性格がつながるとき ― ミオクロニー発作の治療で犬の未来が変わる。

目の前に手をかざすと、衝撃を受けるように細かい瞬きをし、体は小刻みにビクビクと震える。ミオクロニー発作は、当院では高齢なプードルやチワワでよく目にするが、たまに柴犬でも遭遇する。こうした犬たちは普段はどうかというと、共通して感じるのは攻撃性が垣間見えることである。

瞳の奥は覚醒状態。瞳孔が開いて臨戦態勢にあることがうかがえる。ミオクロニー発作は全身の激しいけいれんこそ起こさないが、脳全体に興奮が広がる全般発作の一種である。症状に激しさがないために見過ごされがちだが、対応が急がれる疾患だ。

一方で、情動に影響することもあるようで、感情の起伏が大きい印象がある。触診しようとすると警戒する。鼻にしわが寄り、唇は引き上げられ、犬歯をのぞかせる。この表情の険しさは攻撃が繰り出される一歩手前だ。深追いせずにそっと手を引く。明確な症状が現れているその瞬間だけでなく、このミオクロニー発作は、常にあるいはどきどき、脳全体に影響を及ばし、性格の変化を引き起こしているのかもしれない。

しかし、内服薬を始めて1週間もすると、ミオクロニー発作の症状自体が緩和され、さらに、犬が怒る頻度が減ったなどの声を飼い主から聞くことがほとんどだ。それだけでなく、今までよりも元気にもなるらしい。ミオクロニー発作の治療は、このように典型的な症状を劇的に軽減、あるいはなくすることも可能で、同時に性格を多少なりとも穏やかに、そして活動性を上げることにも効果があるのである。ちょっとでも疑わしい節があるなら、試しに薬を使っても悪くない。