コーギーの変性性脊髄症。生きている間に診断ができない理由。

後ろ足がふらついたり、引きずったり、コーギーにそういった症状が見られたときは、椎間板ヘルニアを第一に疑うことが多い。ところが、最初に症状が見られてから1~2年ほどが経ち、なんだか前足の動きがおぼつかないなどが見られたときは、変性性脊髄症を強く疑う。

いわゆるDMである。DMと言えば一般的にはダイレクトメールの略語だが、この業界では変性性脊髄症の方がまっ先に想起される。コーギーはじめ、シェパード、ボクサー、バーニーズに好発する、あの忌まわしき脊髄疾患。脊髄の性質が変わってしまうのである。

それはつまり、神経としての役目を果たさなくなるということであり、胸髄か腰髄のどこかに最初の変性が起きると、まず現れる症状は後肢の運動失調と麻痺である。この時点で椎間板ヘルニアと見た目は同じであるが、それがDMだったときには、その変性は一ヶ所にとどまらず、延焼していく。第3胸椎から第3腰髄までの第3分節と言われる領域の間に病変部位がある場合は、どこにあっても症状は同じである。そこからじりじりと頭の方へ向かって進行する。

原因は遺伝子変異と言われているが、神経が変性していくメカニズムはまだ解明されていない。なので、治療法がない。そして、神経が重度に変性して神経細胞が消失していくので、形態の変化があるはずなのだが、それをMRIで捉えることができない。これが、DMの生前診断が不可能とされている所以だ。つまり、生きているうちに確定診断ができないのである。