戦慄が走る、パグの神経症状。パグ脳炎が少しでも脳裏によぎるなら、積極的に精査に走るべし。
他にもヨーキーやマルチーズ、ポメラニアンなどの小型犬種に発生することはあるのだが、パグ脳炎という用語は、かつてパグに集団発生したからなのか、それとも語呂がいいからなのか、有名である。その実態は、壊死性髄膜脳炎である。自己免疫性疾患で、自分の免疫が自分の体を攻撃する。その標的は、髄膜と脳だ。
悪いことに、これは進行性なのである。特にパグの場合は、予後不良なことが多く、ひどいケースだと数日から数週間で命が奪われることもあるとされている。だからこそ、若齢のパグにちょっとでも神経症状が見られると、緊張が走るのだ。4歳のパグは、左側に首が傾いていた。斜頸というやつだ。中耳や内耳のトラブルでも起こるのだが、脳の病気でも起こり得る。
不安を煽りたくはないのだが、こればかりは最悪を想定して、飼い主に大学病院受診を提案する。予約して、受診まで1週間ほどあったのだが、それを待つ間、気が気でなかった。悪化してこないか、心配だった。例えば、目が見えない、くるくる回る、ちどり足になる、ボーっとする、食べられない、飲み込めないなどの症状が現れたら、進行している証拠だ。
万が一そうなったときは、応急処置的に薬を使うのだが、そうならないことを祈るしかなかった。結果、中耳・内耳炎と診断された。安堵。こうしてパグ脳炎でないことをはっきりさせるために、飼い主は時間的・金銭的リスクを負ったわけだが、それと引き換えに、我が子を失ってしまうかもしれない恐怖感から解放された。