けいれんを止めるだけでも意味はある。原因がそのままでも許されるケースとは。
けいれんを起こしたとの一報が入った。16歳の小型犬mixが飼い主に抱きかかえられてやって来た。診察台に横たえられた犬は、意識はおぼろげで、少しもがくように、前足を動かしている。自宅から病院に到着するまでの間に、激しいけいれんは治まっていたようだった。すぐに点鼻薬を施した。
間もなく眠っているときと同じくらいの息づかいになり、もがく動きは止まった。早めに鎮静できてよかった。飼い主の話によれば、突然、体が硬直して、反り返るようにして小刻みに震え出したとのこと。強直性けいれんだろう。初めての症状だ。年齢からいって、脳腫瘍や脳梗塞、代謝性疾患などの存在が疑われる。特発性てんかんも高齢だが否定はできない。
胸がゆっくりと上下運動をして、安らかに横になっている犬を目の前にして、これからどうしていきたいかを飼い主に問うた。詳細な検査を希望するという言葉はなかった。ある程度、覚悟はできているような面持ちだった。高齢なので、その気持ちは理解できる。自ずと緩和ケアへ向かう流れとなった。抗けいれん薬の内服を開始し、点鼻薬を手渡した。
原因を把握できなくても、とにかくけいれんを止めること、けいれんが起きる頻度を減らすことは、とても大切。けいれん自体が動物にとっては苦しいことだし、飼い主にとっては見ていられないことだから。原因はそのままなので、対処としては表面的だが、自ずと検査へ向かう流れにしないで、飼い主の真意を明らかにする本質的なやり取りを常にしたい。