この嘔吐は、てんかんの症状だろうか? 嘔吐とてんかんの関連について、このように考えた。
16歳のトイ・プードルが、てんかんの診療に来院した。その症状は、“ 嘔吐 ” だという。瞬間的に、飼い主の思慮深さを感じた。” 嘔吐” と "てんかん" を結びつけるには、一般的には乖離がある。この乖離が埋まる経験をしてきている様子がうかがえた。
飼い主は、初めから「嘔吐=てんかん」と思っていたわけではなかった。そこには、次のような経緯があった。年末に嘔吐が頻繁になった。その後、今年に入って、ミオクロニー発作が現れた。「ミオクロニー発作」という用語も、飼い主の口から発せられた言葉だった。情報収集の賜物だと思った。この犬のミオクロニー発作は、光などの視覚刺激が誘因だそうだ。少しでも視界を遮るために、カラフルなサンバイザーを頭に装着して、飼い主に抱かれている。
飼い主は、自分なりの解釈で、この「嘔吐」と「ミオクロニー発作」に関連があるのではないかと疑ったようだった。嘔吐する犬を目の前にして、原因が脳にあるかどうかを、最初から考えることは多くないと思う。しかし、決定的な証拠が見つからなければ、脳も原因の一つであることを否定できない、という判断をしても、間違いではないだろう。
ミオクロニー発作は、全般発作に分類される。今回のケースは、もし脳に原因を求めるのであれば、次のような考え方になる。最初に焦点性発作が起きて、その自律神経徴候として、嘔吐が現れた。その後、それが全般発作であるミオクロニー発作に伸展した。焦点性発作による嘔吐が起きて、そこで発作が終息した場合は、見た目はただの嘔吐である。日によってはそういうこともあるのかもしれない。一方で、やはり嘔吐は、発作とは無関係なのかもしれない。たまたま同時期に発症しただけとか。いずれにしても、まずは抗てんかん薬をしっかり使って、改善があるかどうかを見ていこうということになった。