猫の便に血が付く。このちょっとした症状をどう考える? その原因と対処法。
猫に痔があるかと言われれば、ない! とは言い切れないのだが、あるとしたら便秘の猫に起きるだろう。猫の便秘にはよく遭遇する。でも、そうではない猫に痔を思わせるような症状が現れることは、よくある。それも若い猫に。高齢な猫なら腫瘍が原因ということもあり得るが、若い猫にその可能性は低い。
血便と飼い主は表現するが、便の表面に血液が付着する程度のもの。パルボウイルス感染症に代表されるような全体が赤く染まる多量の下痢とか、そこまでのものではない。便の形は固いことも軟らかいこともある。このとき、通常、直腸検査をしても異物感に触れることはない。つまり、できものがあるわけではない。
検便で寄生虫の可能性がひとまず否定されるのであれば、次に考えるのは、異物、食物不耐症、血液凝固障害である。血液凝固障害は稀。他に出血の徴候がなければ、後で考える。異物は食べ物以外のものを口にした場合のこと。毛玉、プラスチック、糸、ビニール、トイレの砂など。異物が消化管を通過するときに粘膜を引きずるので、傷がついて血が出る。実際に食べた経歴があるか、誤飲の傾向のある猫かどうかを飼い主に聴く。
そして、食物不耐症。これは、正常な食物に対する異常な反応のこと。全身にではなく、体の一部に症状が現れる。体質によって食べ物が合わなくて、消化管に異常が出るのだ。免疫が関わらないのでアレルギーとは別物。この食物不耐症が便に血が付く原因として一番多いという印象を個人的には持っている。ミルクやおやつをあげていればそれをやめる、消化器用のフードに変更する、といったように、今食べているものを避ける。経験上、すぐに改善が見られるケースがほとんどだ。