老化の仕組みと認知症への寄り添い方―ゆっくりと老いてゆく彼らに今日も変わらない優しさを。

ちょっとした傷の治りが悪くなる。疲れが回復しにくくなる。かつてできていたことができなくなる。高齢になるにつれて、体を構成する物質の原子や分子の収支はマイナスに傾きがちになり、一定を保てなくなる。こうして“生きている”という形は少しずつ崩れてゆく。

それが筋肉や末梢神経に起これば運動機能や感覚機能が低下する。内臓に起これば内臓機能の低下、脳に起こると認知機能の低下ということになる。脳の神経細胞の数が減る。そうすると、脳は委縮する。犬も猫も8~15歳までは10%弱、16歳で約40%、17歳で約80%の割合で、認知機能不全症候群(認知症)になるというデータがある。

生まれてから全力で駆け上がった命は、ギラギラしたそのピークを過ぎて、西陽のように緩やかに沈んでゆく。そして、まさに生涯を終えようとするその間際。宵闇に飲み込まれていくそのときに現れる老化現象。その一つが認知症である。アンチエイジングに勤しまない動物たちは、自らの老化を受け止め、抗わない。うろたえない。

基本的にはこちらが彼らの潔いエイジングに歩調を合わせるのだが、唯一アンチエイジングとされる対策は脳と体の活性化である。補助をしながら散歩をし、日中に太陽光を浴びる。おもちゃを使って遊んであげるのもいい。そして、リハビリである。マッサージやブラッシング、体位変換。これまでをねぎらうように、彼らの体の隅々まで毎日触って、優しい関わりをたくさん増やしてあげてほしい。