脈絡のない意味不明な行動。その意味は? きっかけは? そして、放置するとどうなるか?
好きな人に会って、楽しく夢中になれる時間を過ごす。でも、それは永遠には続かない。いずれは離れなければならない。後ろ髪を引かれながら、おとなしく飼い主に連れて行かれる。車で出かけるのはウキウキするが、散歩となれば話は違う。絶対に行きたくない。あの怖い場所を通るにきっと違いない。無言の抵抗むなしく、おとなしく歩く。新しい犬が家に来た。緊張する。あっちはなんだかあどけなくて無邪気だ。こっちに近づいて来る。どう接していいかわからない。おとなしく臭いをかがせる。
物分かりはいい方なのだ。騒ぎ立てて場を乱すことがない。感情は表に出さず、体はされるがまま。こういうとき、2つの相反する感情が混在することになる。本音ではこうしたいのに、そうできない。そうしたくないけど、こうせざるをえない。多くの犬は、嫌だという気持ちが湧き上がると、ストレートに反応する。露骨に嫌がる。その一方で、平静を装う犬もいる。この平静を装う態度は、飼い主に従順な犬ほど顕著だ。打ち忍ぶのである。
欲求不満と冷静は中和しない。赤と青を混ぜても紫にはならないのだ。煮えたぎる赤は、赤のまま悠々たる青をまとうのだが、そのうち限界が来て、青の隙間から赤が流れ出る。葛藤を感じているように見えるシチュエーションで見られる意味不明な行動は、抱えきれない矛盾がこらえきれずにグワーッと突き破って出て来ているのだ。
理性的でいられるはずがないのだから、そうして現れる行動の見た目にたいした意味はないのだ。なぜそうするのかを考えることの方が大事だ。複数の事例を細かく聴取し、状況を整理して、共通点を探す。そこに文脈が見えてくるのであれば、行動学的問題だ。脈絡がなければ、てんかんなどの神経疾患を疑う。その行動が転位行動だとわかったなら、放っておけば常同行動や常同障害へ伸展する可能性があるので、すぐに取り組める対策を飼い主に伝える。