物音に対して敏感過ぎる猫。それが異常行動に伸展する場合には、聴原性反射性発作を疑う。

5歳の雑種猫は、物音に敏感だ。例えば、ビニールのガサガサ音。それと、家族の人の素早い動き。このように、引き金は視覚刺激と聴覚刺激だ。その刺激に対する反応が鋭すぎるのだ。ピキーンと一瞬にして神経が高ぶる。瞳孔が開いて殺気立つ様子が想像できる。そして、その後すぐに、自分の体を執拗になめたり、かじったりする。沸き上がったエネルギーを舌や歯で外に逃がしているかのようだ。そのせいでおなかの毛は薄い。

この猫は、先日、突然うなって、呼吸が早くなっていたとのことで来院した。きっかけになりそうな出来事は、何もないようだった。本来の性格としてセンシティブであることと、発作といった病的な状態であることとの境目は、外見上は連続的で、簡単に区別ができない。だが、基本的には、発作として対応した方がいいだろうと思っている。それは、そのままにしておくことがかわいそうだからという、その一点に尽きる。

こういった症状の後に、ミオクロニー発作や強直間代性発作が起きれば、脳疾患であることは一目瞭然なのだが、そうでない場合は、決め手に欠ける。それでも、この時点で想定される疾患は、2つ。音に反応するのは、聴原性反射性発作。突然怒るのは、側頭葉てんかん。大まかに、そんな分け方になる。早速、薬物療法を始めたいのだが、その前に考えなくてはならないことがある。それは、それぞれの第一選択薬が異なることだ。

2つのタイプの発作が混在するようなことは通常あり得ないので、どちらかに決めて投薬を始める。まずは、聴原性反射性発作だ。なぜなら、ここで使われる薬は、すぐに中止できるからだ。効果がはっきりしなければ、中止してもう一方の薬に切り換えればいい。2週間後、症状は軽くなった。自宅では、音の刺激に対して、「何だ?」と一瞥するくらいにまで、反応が落ち着いたそうだ。ひとまず、このまま悪化しないか、薬を続けて経過を観察することになった。