犬は人間に嫌がらせをするか、を考えてみたが、本質はそこではないことに気付いた件。

診察のときに、「うちの犬、嫌がらせをするんです。」と相談を受けたことがある。犬が嫌がらせをするとは、考えたこともなかったので、本能的に引っかかるものがあったのだが、その内容を具体的に聞いてみると、トイレ以外の場所で排泄をするということだった。

まず、「嫌がらせ」という行為を分析してみた。辞書には、“ 相手が嫌がることを言ったりしたりすること ”と定義されている。飼い主が嫌がることとは、困ることと同じだろうから、先ほどの排泄の問題もそうだろうし、それ以外に、吠えるとか、咬むとか、そういったこともあり得るだろう。

こうして見てみると、この飼い主の訴えは、犬の問題行動として打ち明けられる、よくある相談だということがわかる。結局、犬の問題行動を、嫌がらせと飼い主が解釈しているという事実が表明されているだけで、「この子の問題行動を、私は嫌がらせと思っています。」と言っているにすぎない。

ということは、嫌がらせかどうかを考えるよりも、まず、病気がないかを除外して、それから普通に問題行動への対策をすればいいということになる。個人的には、犬が嫌がらせをするとはさらさら思っていないが、百歩譲って、たとえ嫌がらせをするのだとしても、別にいいではないか、と思う。そういうことも含めて、突き放さずに、諦めずに、包み込んであげてほしいと思うのだ。そんな1件。