犬が攻撃する理由は、9種類ある。

攻撃の定義は、「 ”自らの目的を敵に強制” するために、戦力を行使する行動 」である。唸ったり、咬んだりする行動。犬の場合、これが攻撃行動ということになる。

犬が嫌がることをされて、最初は我慢していても、ついに繰り出す攻撃行動。この場合、根底にあるのは、恐怖だ。恐怖の裏返しとして、最大の防御とばかりに先制攻撃に打って出る。恐怖性/防御性攻撃行動と言う。そんな犬がフードを食べているときに、人間がそばを通ると、唸る。これは、フードを取られまいとする、食物関連性攻撃行動だ。さらに、他人が家に入ってきた時に、唸る。これは、自分のテリトリーを侵害されることに対して抵抗する、縄張り性攻撃行動だ。

このように、攻撃行動は、唸る/咬むという、見た目は同じ動作でも、動機(きっかけ)や情動反応(きもち)を基準にして、いくつかに分類される。犬の場合は全部で9種類。犬に対する人間の関り方によって、これらの攻撃行動は、日常のさまざまな場面で目撃される。そして、この攻撃行動を通して、犬は、定義に従って言えば、”彼らの目的を人間に強制" する。つまり、「嫌なことをするな」、「フードを取るな」、「私の領域に入るな」、である。不器用でストレートな伝え方だ。

犬が表現するすべての攻撃行動を、同じものと考えてしまうと、出口を見誤る。動機と情動反応を明らかにして、分解・整理する。すると、解決すべき優先順位が自ずと見えてくる。これが初期診断だ。ただし、あくまでも暫定的であり、その後の様子次第で診断が変わることを前提としている。それでも、この手順を踏むことでしか、前に進めない。