”ふるえ” も ”けいれん” もなく倒れる。それは脳の発作ではない! ― てんかんと間違われる「失神」の正体
横になって手足を自然に投げ出している状態。よくある寝姿だ。そこからゆっくりとある動きがその犬に生じてくる。両手は前に突っ張るように伸びていき、それと同時に首が後ろに反っていく。後方回転するかのような体勢だ。目はぼんやりとして意識ははっきりしていないように見える。頭から尻尾まで、特にふるえもけいれんも起きていない。
これは脳の興奮による発作ではなく、脳の低酸素に対する反応である。てんかんと見間違いやすい。低酸素により脳の表面に広がる大脳皮質の機能が落ちて、意識も落ちる。そして、この大脳皮質が障害されると、脳の中央部分にある脳幹に対する抑制が解かれるので、抗重力筋(伸筋)が優位になって手足が伸びる、突っ張る。そして、首や体幹が反り返っていく。
このように、一時的に脳の血流が低下して、短時間の意識消失が生じる。つまり失神である。これは失神のときに見られる低酸素性の姿勢なのである。この失神の直前に動物が鳴くことがある。急な血圧低下では、動物も何かおかしいと違和感を覚えて反射的に鳴く。あるいは低酸素は一瞬だけ脳の興奮を起こすので、思わず声が出るといったところだ。
何も前兆がなく、数秒から数十秒でおさまり、自律神経徴候もなければ発作後徴候もない。よだれも出ないし失禁もしない。何事もなかったようにすっと元に戻る。これが神経疾患よりも先に心疾患、特に不整脈を疑う所見である。聴診をして股動脈を触って”脈が飛ぶ”ことが確認できたら、なおさら疑いは強くなる。急いで循環器科の受診を勧める。

